はじめに

 軽トラックというとどういうイメージをお持ちでしょうか?「遅い・走らない・ダサい・カッコ悪い・ぶつかったら死ぬ」といったところでしょうね。それ1台しかない場合を除いては、わざわざファーストカーにする人もまずいないと思います。しかし、我々農家にとってはいくらダサかろうがカッコ悪かろうが、なくてはならない必需品なのです。(ちなみに、550はともかく、660で空荷なら一般道の範囲内では遅いとは思いません)

 私は’94年頃、「軽トラック研究家」という肩書きで、「現代農業」という雑誌に数ヶ月間連載をしていました。
 一見どれも同じように見える軽トラックですが、メーカーによって構造が全然異なります。エンジンが比較的前にある車があると思えば、後ろにある車があったり、サスペンションもオーソドックスなリーフリジッドばかりでなく、4独やらド・ディオンやらをとり入れているユニーク(かつ合理的)な車種もあります。

 「現代農業」では、それらのメカニズムや各車の特徴などを紹介しました。そして最後に、「軽トラックだからといって安全性はなくてもいいというのはどうか?(当時の軽乗用車の基準であった)40キロの衝突安全基準に合格するトラックも必要ではないか」という提案でしめくくりました。当時は軽乗用車にすら採用例が少なかった両席SRSエアバッグとABSも必要になると言っていました。

新規格軽トラック時代

  その後、ご存知の軽自動車の安全基準の見直しが始まり、軽トラックにも乗用車と同じ50キロの衝突安全基準が適用されることになったのです。一時期は「これで軽トラックはなくなってしまう」という噂も流れました。

 しかし、次期軽トラックはちゃんと開発されていました。
 車体の前部に小さいボンネットを設けたセミキャブスタイルになることは、早くから情報として流れました。するとこんどは、荷台が短くなるとの予測が一般的となりました。「荷台が小さくなるんじゃ使えない」とか「ボンネットのある車は嫌」という人が、現行車種を買うという動きもありました。

  軽乗用車に遅れること3ヶ月。1999年1月6日、三菱ミニキャブ、スズキキャリィ、ダイハツハイゼットから新規格軽トラックは始まりました。1月末にはスバルサンバーも登場しました。

 ミニキャブとキャリィは予定通りタイヤを車体前部に置いた、セミボンネットトラック(セミキャブ)として発売されました。さっそくカタログをもらいに(この時展示車はまだだった)行ったところ、驚いたことに、荷台の長さは今まで通り194cmだったのです。横並びが得意な軽自動車メーカーですから、他メーカーも194cmいっしょです。180cmのベニヤ板が積めるかどうかの話題はふっとんでしまいました。(しかしこの194cmには裏がありました)
 
 この中でダイハツは、驚くことにバン&アトレーを優先してカッコイイデザインにし、トラックはフルキャブオーバーのままマイナーチェンジしてしまいました。他メーカーはセミキャブ型になります。
 スバルもフルキャブのままモデルチェンジし、「フルキャブVSセミキャブ」という問題も出てきました。いよいよ軽トラなんてどこのでもいいといえる時代ではなくなってきましたね。ちなみに、遅れていたホンダは5月末発売でした。(1999年5月)



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