軽トラックの基礎知識 |
![]() 軽トラックは、その名のとおり軽自動車規格のトラックです。現在はトラック単体で開発されることはなく、バンやワゴン車と一緒に設計されます。ただし、ダイハツだけはトラックとバンが別設計となりました。 従来は安全性などあってなかったようなものなのですが、新規格になった時に、時速50キロ同士で正面衝突しても死亡に至らないという最低限の安全基準が設けられました。軽自動車が一回り大きくなったのは、安全基準をクリアするのが難しい軽トラックやバンのためといっても過言ではありません。 販売しているメーカーは、スズキ(キャリイ)、ダイハツ(ハイゼット)、三菱(ミニキャブ)、スバル(サンバー)、ホンダ(アクティ)、マツダ(スクラム)、日産(クリッパー)の7社です。ただし、マツダスクラムはスズキキャリイ、日産クリッパーは三菱ミニキャブのOEMで、同じ物でマークだけ違います。また、ダイハツには新規格初期型までミゼット2という、一回り小さなトラックも存在していました。 構造 新規格車は、タイヤが前にあり、小さなボンネットの付いたセミキャブ型(キャリイ、ミニキャブ、アクティ)と、前輪の上に座るフルキャブ型(ハイゼット、サンバー)に大別されます。 360cc時代はボンネット型、セミキャブ型、フルキャブ型が混在していましたが、550cc時代から’98年までの旧規格車では、ミゼット2やスズキ・マイティボーイといった特殊な車種を除けば、すべてフルキャブ型でした。 エンジンの位置に特徴があり、キャリィとミニキャブはシートの下、車体のほぼ中央に縦に置かれています(ミッドシップ)。ハイゼットも同じくシートの下ですが、フルキャブなので、フロントミドシップとなります。 それに対してアクティは後輪直前に横に置かれていて、リヤミッドシップといいます。サンバーは車体後端に横に置かれていて、リヤエンジンに分類されます。 前輪のサスペンションは全車ストラットで、普通ポジディブキャンバー(前から見て前輪が逆ハの字)に設定されていて、車体が沈み込むとネガディブキャンバー(ハの字)になる構造です。後輪はキャリイ、ミニキャブ、ハイゼットがデフ一体の、トラックとしてはオーソドックスなリーフリジッド型なのに対して、アクティはリーフリジッドに似た形でもデフが別体となるド・ディオン型という変わった形式を採用しています。サンバーはエンジンを避けるためセミトレーリングアームの4輪独立サスペンションとなります。 また、2WD車はすべて後輪駆動となります。4WD方式はアクティ全車とサンバーのAT車がビスカス式のフルタイム4WD、それ以外がパートタイム4WDになります。このように、知らない人にとってはどれも同じに見える軽トラックですが、実にバラエティに富んでいるのです。1つのクラスで、これだけ構造に違いがあるというのは珍しいでしょう。 軽トラックの4WD車は農家がターゲットのため、田畑の中に入って行く時に使う1速より低いギアー又はトラクターのような副変速機が付いていたり、後輪の左右をロックするデフロックや、リミテッドスリップデフが付けられる車種もあります。 寸法 軽トラックの外寸は全長3.4m、全幅1.48mと、規格いっぱいにできています。全高は規格では2m以下なのですが、1.8m前後になります。 荷台の中の寸法は、現行車はカタログ上は全車1940mmですが、鳥居までの実質寸法で1910〜1940mm、荷台床面長は1940〜2030mmと、車種によってやや差があります。幅はほぼ1410mmです。アオリの高さは290mmと申し合わせしているようです。 新規格初期型のセミキャブ3社は鳥居までの長さが1830mm程度とちょっと短めでしたが、それでも農業で使う一般的なコンテナ(520mm×360mm×300mm前後)なら1段に付き13個積めます。 旧型だと11〜12個でした。 我が家の場合、長さ1mの花の箱を積みます。いずれにしても前後に2列に積むとはみ出てしまうため、テールゲートにチェーンをつけてアオリをあけた状態になるので、数センチの違いは問題にはなりませんでした。 ただし、畳屋さんだと初期型セミキャブでは京間サイズを積むにはアオリをあけなければいけないなど、業種によっては問題になる部分もありそうです。 積載重量は350kgとなっています。360cc時代から変わらないもので、実情とかけ離れていますが、実際は500kgくらい積んでも安全に走れるようです。 そこで、こんな場面で不便になりました。 ![]() この小路を利用している人は、これと同じ型のアクティを愛用。旧規格車だとすんなり通れるのに、新規格になったら写真右の塀にミラーがぶつかり、折りたたまないと通れなくなったそうです。私もチャレンジしてみたところ、左右のミラーをたたまないとダメで、危うくホイールに傷をつけるところでした。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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新規格軽トラックで最も問題になるのがこの問題でしょう。セミキャブという今まで見慣れなかった形、いや、30数年振りの懐かしい形に戸惑いを見せるのではないでしょうか? ![]() セミキャブ・アクティの足元 ![]() フルキャブ・旧エブリイの足元 共にアクセルとクラッチを踏んでいる状態です。
セミキャブ形式は乗り降りする際に足元が窮屈だと思われがちですが、実際には小柄な人の場合はセミキャブのほうが乗り降りしやすく、大柄な人の場合はフルキャブの方が乗り降りしやすい傾向があるようです。 ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() フルキャブ型 ![]()
新規格軽トラック初期型の荷台長は、アクティの187cm除いてすべて194cmとなっています。しかし、これには裏がありました。
2000年度新車販売台数(社団法人全国軽自動車連合会のページから)
フルキャブオーバーのハイゼットとサンバーは、鳥居のすぐ下の平らな部分までが194cmです。ハイゼットは椅子の裏がえぐられているため、床面長は2mを超えます。 それに対し、セミキャブのミニキャブとキャリィは、床面長、つまり椅子の裏のえぐられた部分までを194cmとしています。ちなみに、ミニキャブの本来の荷台長は187cm程度だそうです。 どうやら、軽トラックの荷台長は194cmまでという決まりがあったために、セミキャブメーカーは数字のトリックを使ったようです。 追記:2000年12月までに、キャリィ、アクティ、ミニキャブのセミキャブ3車の荷台前面パネルが変更され、実質荷台長がフルキャブ2車と遜色ない192cmになりました。 車としては確かに速い方ではありませんが、郊外のバイパスの流れに乗って走るくらいの能力はあります。
全車グレードやオプションにより、エアコン、パワステ、ABS、SRSエアバッグも選べます。ただし安全装備は買う時に注文しておく必要があり、後からつけられません。安全装備の装着率は非常に低いので、受注生産に近く、納車に手間がかかる場合が多いです。中古で安全装備付き車を探すのも難しいです。 オーディオはAMラジオだけのものから、AM/FMカセットステレオ装備のものまであります。市販の1〜2DINもちゃんと付けられます。 アクティの内装は前面フルトリム、キャリイやハイゼットも成型内張りが使われ、結構見栄えは良かったりします。シートもファブリック地のものがあります。 ちょっと前まで運転席シートスライド、空調操作部照明、パーキングブレーキ警告ランプなどがなく、タイヤもバイアスがあたり前でしたが、さすがに現在はそこまでコストダウンしたものはなく、だいぶ快適仕様になりました。ただしキーレスエントリーやパワーウインドゥはまだ純正装備ではありません。(一部オプション) グレードによっては間欠ワイパー、助手席サンバイザー、トリップメーターがなかったりします。 オートマチック車もあります。ミニキャブのTLが4速、他は3速オートマです。アクティ以外は4WD+オートマもあります。 ただしノーマルエンジンではちょっと不足かな?という感じがあります。ミニキャブ4ATとサンバーのスーパーチャージャー以外は、高速道路をある程度犠牲にして、街乗り中心のセッティングになっているようです。 その反面・・ 乗り心地はそれなりに硬いです。法規上は350kg積みですが、1トン近い積載を見越してスプリングの設定がなされているので、特にリヤがポンポン跳ねます。車種、グレードによっては「強化スプリング」(4枚リーフ)付きの設定もありますが、更に乗り心地が悪くなることは覚悟してください。 ただし以前のものよりはずっと良くなりましたし、裏技ですが乗用車タイヤに換えるとだいぶ乗り心地が良くなります。下手なローダウンドレスアップカーよりはいいくらいです。 室内はほとんどの体型の人がちゃんと運転できる広さになっていますが、アクティの後期型は狭く、大柄な人はかなり窮屈そうです。全車ともシートは簡素な作りといわざるを得ません。ただし、アクティとキャリイ(いずれも後期型)のシートバックは少し湾曲していて、少しですが背中や腰をホールドするようになっていまし。 元々トラックで育ってきた私の場合は、何百キロ走っても苦痛はありませんが、乗用車しか乗ったことがない人には違和感があるでしょう。セミキャブの後期型は、荷台の広さを優先したため、シートバックの角度も立って気になります。 燃費は? もちろん乗り方や地域によって変わりますが、研究員報告をまとめると、4WDの5速マニュアル車で、およそこんな感じです。
AT車は10〜20%減、エアコンONで10〜15%減となります。軽はエアコンロスが大きいです。 どれくらいもつの? 使う人によって様々です。6万キロでエンジンをダメにしてしまった人もいれば、20万キロ以上走っている人もいます。10万キロを超えたあたりから、トラブルは覚悟しなければいけませんが、早めに対処すればけっこう持つものです。 錆については最近は表面錆び3年、穴あき5年保障の防錆強化仕様が発売されています。しかし手入れ次第というところも大きいです。
現状の問題点と課題
○旧規格から比べれば遥かに進歩した安全性ですが、現代の自動車全体から見るとまだまだ最低限という感じです。次は自重の1.5倍くらいの重さの乗用車と実際にオフセット衝突試験させるという「コンパティビリティ」が求められます。ただし、そのために車重が増えても問題になるので、頭の痛いところでもあります。
○現在は再び荷台長競争が激化しているのですが、特にセミキャブはキャビンが狭くなってしまう傾向があります。荷台長もキャビン長も安全性も欲張ってはどっちつかずになってしまうので、「ウチは安全性を重視しているので荷台は少し狭い」といったように、メーカーやグレード展開によって特色を出してもいいと思います。 ○MTはかなり熟成され、NAでもそこそこ走るようになりましたが、ATとなるとまだ未発達という感じです。4速ロックアップ付きATやCVTの改良によって「使える」ATが欲しいものです。660ccでは役不足という感じではありますが。 ○グレード展開が曖昧だと思います。農業用は大径タイヤで地上高を確保するなど、業種別に性格をはっきりさせてもらいたいものです。
現在の車と比べれば、もちろん安全性は劣りますが、予算や車体サイズの都合によって、中古で旧規格車を買わざるを得ない場合もあると思います。
その場合は、5速ミッションとエアコン付きを買っておいた方がいいでしょう。 4速しかなかった時代はそれなりのギア比を与えられていました。しかし、550cc後期型あたりからの、4速と5速が併売されていたモデルの4速車、特に4WDは、単純に5速車から5速ギアをなくしただけの設定で、燃費も騒音も不利になってしまいます。最高速度も実質100km/hで精一杯です。 また、現行モデルなら中古で買ってもエアコン後付けができますが、モデルチェンジして旧型になった場合、エアコンも在庫限りで、手に入りにくくなる場合が多いようです。 よく聞くトラブル
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