河北民報 2004年11月18日号

十月二十七日に町から議会に対して、国民健康保険税の増税案が示され、福祉厚生と総務文教の合同委員会で調査することになりました。その主な内容についてお伝えします。

国民健康保険で26.4%の増税案


増税は必要か
町の原案では来年度から3年間、8%台の増税を繰り返して合計26・4%の増税をしようというものです。
増税は必要なのでしょうか。

国の負担を町民に付け回し
02年十月から、70歳になる国保加入者について74歳までを前期高齢者として老人保健会計から分離し、国保会計で負担するように切り替えられました。
その結果、69歳までの国保加入者の医療給付費平均は約14万円ですが、前期高齢者は平均約28万円で、その差額分国保加入者の負担が増え増税が必要とされています。
逆に国の負担率が高い老人保健会計は負担が軽くなっています。

医療費の増加も

また毎年、一人当たりの医療費などが増える傾向も増税の要因と見られています。

増税案調査の日程
町の国保税増税提案を受けて福祉厚生と総務文教の合同委員会では、十二月定例議会の日程にこだわらず調査することになりました。
田宮町長は、一月中旬頃までには臨時議会で決めてもらえないかとの希望を述べています。

町民説明会について

また合同委員会では、国保税増税案の町民説明会について
① 議決の前に増税について町民に情報提供するための説明会が必要だ。
② 町民には議会が責任をもって決定してから、決まった内容について説明会を開催すべきだ。
と意見が分かれ、説明会の持ち方についてさらに検討することになりました。

00年度から単年度赤字に
国保会計は99年度まで黒字ベースで国保基金が4億9千万円まで増え、99年度と00年度に税率を変更し、基金が増えすぎないように調整をしています。
しかし、その後の経過を見ると医療給付費が急増し00年度から単年度で赤字になっています。

所得・資産割は減税多人数世帯は増税
当時の税率変更は所得割、資産割を引き下げ、世帯当りの平等割、人数にかける均等割を引き上げるものでした。(下の表参照)
これは応能割(所得や資産にかける税金)を減らし、応益割(世帯や人数にかかる税金)を増やして、その比率を5対5に近づくように誘導する国の方針に応えたものでした。

滞納者が急増
結果として、収入が少なく人数の多い世帯の負担が増え、滞納者が増加、収納率も下がりました。
滞納の罰則として短期保険証などに切り替えられる世帯が、98年のゼロ世帯から127戸(04年9月)にもなっています。

医療給付費が急増
00年度は前年度に比べ、収入は2千500万円減額、支出は1億4千500万円の増額になり、赤字に転落しました。
医療給付費が急増した原因の分析が必要です。

一人当り医療費が急増

01年度には一人当たりの年間医療給付費が、前年度の13万7千円から14万8千円に10・5%も急増し赤字の原因が増えています。

国の付け回しやめよ
それに加えて前期高齢者分の国の負担付け回しが大きな負担増になっています。世論の力で負担付回しをやめさせる必要があります。

三年連続の増税案

十月二十七日に合同委員会に提出された国保税の増税案についてご紹介します。(下の表参照)

これまでの税率変更      提案されている増税案

~98年度 99年度  00年度    05年度  06年度  07年度
所得割   6.3% ▽6.0%  ▽5.4%    ▲6.0%  ▲6.7%  ▲7.5%
(98年度比19%増)
資産割  42.70%▽32.41%▽29.40%  ▽26.00%▲28.00%▲29.00%
(98年度比32%減)
均等割(円) 12,000 ▲15,900 ---   ▲22,200 ▲24,000  ▲25,200
(1人当り)                                 (98年度比110%増)
平等割(円) 22,200 ▲25,800 ---   ▲27,000 ▲28,200  ▲30,600
(1世帯当り)      ▽は減税 ▲は増税             (98年度比38%増)




2004年11月18日の2面

町の社会保障制度(国保)を守れ

だれでも利用できる国保に

増える一方保険証の資格制限
最近まで、河北町の国民健康保険制度では滞納があっても、健康保険の受給資格制限はありませんでした。
ところが、99年に応能応益のあん分率を変更(オモテのページで説明)し、収入が少なく多人数の世帯に増税したころから受給資格制限が始まりました。
資格制限とは、国保税を滞納すると6ヶ月、3ヶ月、1ヶ月の「短期保険証」や、窓口で一旦全額支払う「資格証明書」、さらに「一時差し止め」という医者にかかりにくくなる罰則です。
もともとなかった資格制限ですが、01年には59世帯、02年は100世帯、03年は109世帯、04年9月には127世帯と増える一方です。
納税者本人や税務課の努力にもかかわらず、滞納は増え続けています。

負担能力超えない税率を
これまでの経過を検討し、支払い能力に対して税が重過ぎることはなかったか検討が必要です。
今回の増税で、収入が少なく多人数の世帯にさらに重点的(オモテページの表)に増税して、負担能力を超えないのか、慎重な検討が必要ではないでしょうか。

一般会計から繰入を
全国平均は10倍
自治体独自の国保会計に対する繰入額は、01年度の河北町は1人当り743円、全国平均は7838円で河北町の10倍でした。
町の大事な社会保障制度である国保制度を、全部の加入者が安心して医者にかかれる制度として守るため、全国並みに一般会計から繰入すべきではないでしょうか。

値切った分は繰入を
河北町では一般会計から国保会計への繰入額が値切られていました。
電算処理費や嘱託の人件費、消耗品費は、事務費として一般会計から国保会計に繰入すべきですが、その約3分の2、年間1000万円前後が02年以前ずうっと値切られていました。
これは当然、さかのぼってでも繰入すべきです。
いつからどのくらい値切られていたのか、現在調査中です。

応能応益あん分は適切な判断を
国保の制度として、所得の少ない国保加入者には国保税の減免制度があり、減免した分は国が2分の1、県と町が4分の1ずつ保険基盤安定負担金として補填する制度があります。
河北町では現在、国保加入者の38%が税を減額され、補填される金額は4千300万円です。

応益あん分を増やすと低所得多人数世帯が大変
増税案では現在42%前後の応益(世帯平等割と均等割)あん分を50%にしようとしています。
応益のあん分が45%から55%になると、所得が低い世帯の税減免率が7割、5割、2割になって保険基盤安定負担金を多くもらえるからです。
反面、収入が少なく多人数の世帯の増税率が高くなり、税の負担能力を超え、国保税を払えない世帯が続出する心配があります。
応益あん分が45%から35%の場合は税減免率が6割、4割となります。
いろいろ試算して、慎重な判断が必要です。

資格制限の見直しを 国や町の都合でどんどん増税しながら、滞納する人には、医者に行きにくくする罰則を与えるやり方はひどすぎます。鶴岡市などのように資格制限をやめるべきです。

増税要因の分析を
町の資料では、国からの付け回し分と医療給付費増加分が一緒に計算されていますが、分けて分析しそれぞれについて適切な対策を検討することが必要です。
また前期高齢者の04年から08年にかけての医療給付費推計は、平均年齢上昇と自然増で医療給付費はだんだん上がるはずなのに、町の資料では5年間同じ予測金額で、重要な部分で不十分な推計ではないかとの心配があります。

国保会計の実績と増税しない場合の推計 (河北町提出資料より)
00年度 03年度   04年度   05年度 06年度 07年度 08年度

国保収入(百万円)  1,168   1,098    1,005    1,031  1.000   1,009   1,008
国保支出(百万円)  1,297   1,133    1,110    1,151  1,157   1,173   1,163
基金残高(百万円)   493    272      212     165     9      -155   -310

被保険者(人)     7,036   7,685     7,753    7,897  8,015   8,134   8,133
一般被保険者(人)  3,897   4,038     3,929    3,823  3,720   3,620   3,522
一般の前期高齢者(人) 0    118      230    368    480    565    537
退職被保険者(人)   832    922      979    1,040  1,104   1,172   1,244
退職の前期高齢者(人) 0     59      119    221    316    431    484
老人保健対象者(人) 2,307   2,548     2,496   2,445   2,395   2,346   2,346
国保世帯(世帯)    2,963   3,308     3,341   3,374   3,408   3,442   3,476